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2026.04.01

旅時間を印象的に描き留める♪ イラストレーターnaohigaさん直伝! 心に残る旅ノート術[神戸編]

イラストレーター naohigaさんがパイロットの筆記具と旅をする人気企画第5弾の旅先は神戸。異国情緒あふれるスポットやお店をめぐります。旅の記憶を印象的に描くコツや、旅ノートを描くときの心得を教えていただきながら、北野異人館街からベイエリアまで、神戸の街をめぐりました。

旅先でリアルに感じた街の空気感や印象を
ダイナミックに描く秘訣。

今回の旅先は、レトロとモダンが交わるおしゃれな港街、神戸。六甲山系に囲まれた新神戸駅で naohigaさんと待ち合わせて、ゆっくりと散策のスタートです。

今回の旅のテーマは、古くから海外に開かれてきた神戸ならではのレトロ建築と、パンや菓子など、さまざまな国の食文化が交わりながら育まれてきた街の魅力を描くこと。

よく晴れた早春の朝、最初の訪問先である北野異人館街へ向かう前に、まずは地元でも人気のベーカリー「sandwich_bakery_FORK(フォーク)」に立ち寄りました。

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つくりたてのパンと色鮮やかなフルーツサンドイッチが並ぶベーカリーで、ブランチ用のパンを選ぶnaohigaさん。買い物中にも多くの地元の人々が店を訪れる人気店。


「わぁ、おいしそうですね。今日は食べ物をおいしそうに描くこともテーマの一つですから、パンを選ぶところから旅ノートづくりは始まっています。自分の好みを優先するのはもちろん大事にしながら、でも旅の記憶を鮮やかにノートに刻むためにも、イチゴのフルーツサンドなど、色を表現するのが楽しくなるようなものを選ぶと気分が高まりますよ」

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ブランチ用のパンを携えて北野異人館街へ向かうと、緩やかな上り坂が続く道を進むほどに、異国情緒が色濃くなってきました。

「トンネルを抜けたところに位置する新神戸駅を降りたときも山手の方にいる実感がありましたが、異人館のあるエリアは、さらに山手の方にあるのですね。その土地ならではの地形は、こうして歩いてみなければなかなか実感できないことです。現地を旅したからこそわかる空気感や地形の様子まで描くことができると、旅のシズル感がより伝わる旅ノートになりそうです」

朝の澄んだ空気の中、美しい外観の異人館「うろこの家」を通り過ぎ、小径をさらに山手へ登っていくと、山から海へとなだらかに広がる神戸の街を一望できる「港見晴らし台」に出ました。

「ここは、神戸という土地の特徴をつかむのに格好のスポットですね。今歩いてきた山手の景色はもちろん、向こうに霞むメリケン波止場まで見渡せます。この場所に立ったときに胸が高鳴った気持ちを絵に刻みたいので、ここからの視点を旅ノートにも活かしましょう

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明治時代に建てられた異人館の中でも、神戸で最初に公開された伝統的な建築物「うろこの家」の裏手にある「港見晴らし台」からは、港まで見渡せる。


見晴らしのいい場所でのブランチタイムに、先ほど購入したフルーツサンドを味わいながら、絵の構図を考えている様子のnaohigaさん。おいしさを表現したいとイチゴの断面を観察したり、ベストな角度を探りながらスマートフォンで記録撮影をしたりしているうちに、旅ノートの構図が決まったようです。

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「描きたい角度が決まったら、後でディテールを描き込むときに見られるように、同じアングルで撮影しておくと描きやすいです」とnaohigaさん。


「今回はこれまでと少し趣向を変えて、鳥の目線で奥行き感のある旅ノートにチャレンジしてみたいと思います。山と海、両方が共存する神戸という街の魅力を描き留めるのは、一見難しそうに感じるかもしれませんが、方法はシンプル。まず、今立っている場所から見える景色の中で、メインとなる道をノートの見開きにわたって思い切って描きます。今回はノートが小さめなこともあって、2見開きを使いたいので、次のページにもつながるような道を描き込みます。あとは、訪れる先々で印象に残ったアイテムを1、2点ずつ選んで、空いているスペースに割り当てていく、という流れです」

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上:まずはイラスト全体の構成を決めて、鉛筆で薄く構図を描き込むnaohigaさん。下左右:そして、ゲルインキボールペン「ジュースプラス」のブラックで、メインストリートを思い切って見開きに描き入れます


「メインストリートはあくまでも目安にするだけで、地図通りに描く必要はありません。だいたいこの辺りだったなと、あとで思い出せる程度にとどめ、遊びを持たせておくことも、旅ノートを気軽に楽しむ秘訣なのではないかと思います」と、旅ノートが初めてという方でも気持ちが軽くなるようなアドバイスをしてくれました。

もう一つ大事なのは、「旅ノートを描くための旅ではなく、あくまでも旅そのものをきちんと楽しむようにすること」だとnaohigaさんは語ります。

「旅先でも気軽に絵を描きたいので、"携帯するイラストの道具はコンパクトに"を心掛けましょう。フットワーク軽く散策したいですし、小ぶりなハンドバッグに収まる程度の画材セットがおすすめですね。今回は、ノートそのものも今までで一番小さなサイズを選んでみました。描きたいときにバッグからパッと取り出しやすいこと、そして紙面も限られているので、描きたいものがいっぱいで迷いそうなときも、思いきって絞ることができていいですよ」と、naohigaさんが携帯する道具セットを見せてくれました。

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旅に携帯するイラストの道具はコンパクトに。


「そして、今回は画材として、小さなノートにも描き込みやすいゲルインキボールペン『ジュースプラス』と、新たな画材としてプライベートで絵日記を描いている水彩絵の具を選びました。水彩は、色の濃淡が出て味わい深い点は、どこか万年筆に通じるところがありますね」

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おいしいものを感じたままに、
五感でキャッチした旅の印象を描く。

北野異人館街から長い坂を下ると、旧居留地へ出ました。江戸末期の神戸港開港から明治にかけて外国人が働く場所として整備され、今も当時の面影を残す歴史的建造物や近代建築が点在するにぎやかなエリアです。

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高級ブランド店が軒を連ねる通りをウインドウショッピングしながら波止場のほうへ歩くと、ひときわ重厚感のある「商船三井ビルディング」が現れます。第二次世界大戦の空襲や阪神・淡路大震災にも奇跡的に耐え抜いて、今なお存在感のある歴史的建造物です。

「重厚な石造りの外壁やアメリカンルネッサンス様式の装飾など、こうした見どころがたくさんある建物は、どこから描いたらいいのか迷うところですが、自分自身が一番印象的で魅力を感じた角度から描くのが王道です。今回はやはり、曲線になっている建物正面の迫力ある外観でしょうか。街中ではなかなか立ち止まってスケッチはできないので、スマートフォンで描きたいものを撮影しておくことを忘れずに」

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1922年に旧大阪商船神戸支店として竣工した、重厚かつ優美な外観の「商船三井ビルディング」。


山手から海の近くまで一気に歩いたので、ここで休憩も兼ねて公園でスケッチタイム。

「写真を撮ったことに安心して、後日あらためて丁寧に描こうと思っていると、意外にもすぐ時間が経ってしまうもの。もちろん、ディテールを描き込むなどの仕上げ時間は必要ですが、“その場で描くこと”もそれ以上に大切です。なぜなら、目に映るものはもちろん、風を受けた肌感覚や耳に残る音など、五感でキャッチした臨場感を絵にも盛り込みたいですから」

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ミニサイズのパレットに少量の絵の具を出して、携帯型の筆洗いケースに水を入れて持ち歩けば、ちょっとした待ち時間などに、パッと取り出して水彩で絵を描くことができる。


全体の構図を決めてざっくりラフにスケッチしてから、naohigaさんがまず筆を入れたのは、フルーツサンドです。

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「水彩は、描く対象の淡い部分から徐々に色をのせていきます。私の場合は、多めの水で絵の具を溶いて、白い紙に色がつくかつかないかというくらい薄い色から始めるんですよ。そして少しずつ濃い色へと重ねていくことで、例えばサンドイッチのパン生地の淡い部分にも微妙な陰影が出て表情が生まれます。イチゴも同じ。イチゴの断面の白い部分から外側の赤い部分までグラデーションになるように、焦らずに、でも慎重にもなりすぎないように、ほどよくラフに着彩します」

旅先であっても、一気に仕上げようと先を急がずに、ゆったりした時間を楽しみながら描くことも、心に残る旅ノートづくりに大事なことのようです。

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中華街の裏路地という隠れ家的な立地ながら、開店直後から客足が途絶えない人気店、ラ・ロッタ・ベーカリー。


次に向かったのもまた、素材の風味を生かした焼きたてパンが並ぶ「La LOTTA Bakery(ラ・ロッタ・ベーカリー)」。香ばしい匂いに包まれた店内には魅力的なパンや焼き菓子がいっぱいで、食欲も絵心も刺激されます。

「見ているだけで気分が上がるビジュアルですね! 持ち帰って味わいながら旅の余韻に浸りつつ描くことを楽しめるのも旅ノートの醍醐味。旅の最中はもちろん、帰宅後も旅時間が続くのがいいですよね」

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買い物の後に訪れたのは、落ち着いたおしゃれ空間で、丁寧につくられたスイーツをゆったり味わうことができる「café & bar anthem(アンセム)」。この日オーダーしたスイーツは、ガーゼに包まれたふわふわ食感のレアチーズケーキです。

「ほぼ真っ白な世界観のレアチーズケーキは、一見描くのが難しそうですが、チーズやガーゼの白さの中にも陰影があります。そこをうまくとらえて、白いものを白く描くのではなく、淡いグレーで少しずつ影の部分を描いていくと陰影を表現できます。その上から黒のボールペンでラインを入れると、絵がぐっと締まった印象になるんですよ」

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紙面全体的に、淡い部分を着彩し、徐々に濃色をのせて陰影を描いていく。

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海辺で感じた潮風をプラスして
旅ノートに旅情感を漂わせる。

神戸の旅はいよいよ海辺のエリアへ。取材当日の気候は穏やかながらも、港へ出ると風とともに潮の香り。船着場に大型船を誘導する水先案内人としてのパイロット船が往来し、メリケンパークには、2025年にリニューアルオープンしたポートタワーやBE KOBEのモニュメントなど、神戸らしさが凝縮されたようなスポットが点在しています。

「旅ノートには、誰もが一見して“その土地らしい”と感じる名所を描き入れることも大事です。この真っ赤なポートタワーはとてもシンボリックで、かたちも色合いもアイキャッチになりますね」と描きたい角度を探して、すかさずスマートフォンで写真におさめます。

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上・下左:青空に映える赤いカラーが印象的なポートタワー。下右:港に入る大型船が安全に航行できるよう誘導する水先案内人のパイロット船。「業界の水先案内人となるように」という思いが込められたパイロットの名前の由来でもある。


描くときは、フルーツサンドのときと同じように、水彩で淡い部分から色をのせていきながら、赤いラインも水彩で描きます。そしてその上から、黒のボールペンで手前にある建物やポートタワーなど輪郭のはっきりしたモチーフを重ねて描き入れます。

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上左:水彩で淡い部分から色をのせていきながら、上右・下:その上から、黒のボールペンで輪郭のはっきりしたモチーフを重ねるようにして描く。


そしてnaohigaさんのイラストの中にはいつも、その旅だからこそ出合えた微笑ましいワンシーンが描かれています。

「異人館エリアもメリケンパークも、とにかく修学旅行生が多かったことが印象的でした。ですからそれを、どこかにちょこっと描き入れたいですよね。観光スポットを描くだけなら、ネット検索した画像を見ながらでも描けますが、現地で出合った風景はリアルでしか得られない肌感覚です。後で見返したときに訪れた当時の感覚が蘇って、それがまた楽しいんです」と黒のボールペンで修学旅行生たちをさらさらと描き足していきました。

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さて、旅ノートもいよいよラストスパートです。見開きにわたっての旅のタイトルやお店の名前を描き入れて、一気に仕上げモードへ。

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黒のボールペンで文字が入ると紙面のなかに見どころが生まれます。文字のスタイルも袋文字にしたり、筆記体風にしたりと、バリエーションがあるとメリハリが出て楽しいですね。そして最後に、絵のどこかに、神戸の旅で感じた“風”を描きたいと思っていたので、山手に立って神戸の街を眺める自分自身のコートのベルトと髪をさりげなくなびかせて風を表現してみました。ちょっとしたことですが、絵に動きをつけると、旅時間が流れ出す感じがしませんか?」

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水彩による着彩がひと通り終わったら、仕上げはゲルインキボールペン「ジュースプラス」の黒と赤で。


「旅そのものも、旅ノートを描くことも両方楽しんでほしいから、ときめいたものを全部描きたくなる気持ちはぐっと抑えて、楽しい気分やエピソードなど、この旅ならではの出来事やモノを描いてみてください。どんなにラフな絵でも、少々失敗しても大丈夫です。それも含めて、きっとスペシャルな旅の記憶になってくれることと思います」

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▶︎使った筆記具:

ゲルインキボールペン「ジュース プラス」(ブラック / レッド) / 水性絵の具セット





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naohiga さん イラストレーター

1983年生。山形県出身。大学卒業後、グラフィックデザイン会社勤務ののち、フリーのイラストレーターに。雑誌やWeb媒体、アパレルブランド等を中心に活動。

naohigaさんのInstagram公式アカウントはこちら 〉〉〉@naohigaillustrator


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travel note

▶︎sandwich_bakery_FORK(フォーク) https://www.instagram.com/sandwich_bakery_fork
▶︎異人館「うろこの家」 https://kobe-ijinkan.net/
▶︎神戸商船三井ビルディング 神戸市中央区海岸通5番地
▶︎La LOTTA Bakery(ラ・ロッタ・ベーカリー)  https://www.instagram.com/maru.lotta/
▶︎cafe&bar anthem(アンセム)  https://www.instagram.com/cafeandbaranthem
▶︎ポートタワー  https://www.kobe-port-tower.com ///////////////////////////////////////////////////////////////


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