イラストレーターnaohigaさんが伝授! 街散策を3倍楽しむ♪ 技アリ旅ノート術[かっぱ橋編]

2025/07/25

イラストレーターnaohigaさんが伝授! 街散策を3倍楽しむ♪ 技アリ旅ノート術[かっぱ橋編]

イラストレーター naohigaさんがパイロットの筆記具と旅をする人気企画第4弾の旅先は、東京「かっぱ橋道具街®️」。かっぱ橋は久しぶりというnaohigaさんが行ってみたかったスポットをめぐります。街散策スタイルの旅ノートを描くためのお役立ちポイントや旅の楽しさを描くコツを教えていただきながら、観光客でにぎわうかっぱ橋を旅しました。

テーマ型のエリア散策は、MYガイドマップをつくる気持ちで!
事前計画から旅を楽しむ♪

カラッと晴れた空のもと、naohigaさんと待ち合わせたのは、浅草からほど近い菊屋橋交差点。料理人の聖地とも称されるかっぱ橋道具街®️は、飲食店向けの調理道具や食器、ユニフォームなどの専門店が軒を連ね、目利きの料理人から外国人観光客まで惹きつけるスポットです。そんな商店街散策の旅をnaohigaさんはどう描くのか。実際に街を歩きながら、旅ノートづくりが始まりました。

naohigaさんの旅ノートづくりは、街歩き前からすでに始まっています。今回はまず、スケッチブックの左半ページに白地図を描いて、訪れたいスポットをシミュレーションしてみたのだとか。

「かっぱ橋のようにひとつのエリアに見どころがぎゅっと集中している旅先では、どうしても現地で絵を描く時間がとれなくなりがち。そんな時は、旅の前に散策エリアの白地図を描いて、行きたい場所をマークしておくことをおすすめします。街を楽しく散策することも旅の目的のひとつですから、気になるお店や訪れたいスポットを地図上に鉛筆で軽く描いて、歩く順番を想像してみるんです。計画する時間も心が弾んで、旅の楽しさを味わえるのがいいですね」

05_enjoy027_1aa_4039.jpg

散策エリア全体の主な通りを、カラー筆ペン「筆まかせ」のグリーンで描いて、気になるスポットは後で消せるように鉛筆で軽くマークを入れておく。


待ち合わせ場所の菊屋橋交差点は、かっぱ橋道具街®️の最南端。まず目に飛び込んでくるのはこの街のランドマークでもある「ニイミ洋食器店」屋上のジャンボコック像です。高さ約3メートルの巨大像は真っ白な帽子に笑顔が印象的で、まるで街を見守る門番のよう。アーケードが続く商店街には器や調理道具の店が並び、思わず足を止めて見入ってしまいます。

「人通りも多いので、これまでの旅のように立ち止まってスケッチをするというわけにはなかなかいきません。街中散策の場合、これは!と気になるモチーフがあったら、後でじっくり見ながら描けるように記憶しておくことが大事です。その時にポイントとなるのが、自分が惹かれる角度やインパクトのある画角など描きたいアングルで覚えておくこと。ちょっとした角度で表情が違って見えるから不思議です。旅ノートにも迫力が出たり、印象的に仕上がったりするので、結構大事なコツなんですよ。店内の商品の場合はお店の人に相談して、写真を撮らせてもらえると、なお安心ですね」

05_enjoy027_1a_gousei.jpg 05_enjoy027_1b_3627.jpg 05_enjoy027_1c_8181.jpg

上:かっぱ橋道具街®️の入り口感を描きたかったので、信号を渡って向かい側からパチリ。下:南北に伸びるアーケードの商店街には、器や調理道具の店がずらりと並ぶ。

05_enjoy027_1d_5641.jpg 05_enjoy027_1d_5639.jpg

ミニチュアサイズの寿司やスイーツのストラップやキーホルダーからステーキ肉まで、食品サンプルが所狭しと並ぶ店内。


気持ちがはやる中、naohigaさんがふと足を止めたのは、カラフルな食品サンプルが並ぶ「東京美研」。外国人観光客がひっきりなしに訪れる様子から、食品サンプルの人気ぶりがうかがえます。とろけそうなパフェや焼き鳥の焦げ具合など、あまりのリアルさに「描きたくなるモノの宝庫ですね」とnaohigaさん。旅ノートで大切にしているのは、「おもしろい!」という旅の感動を描くこと。すかさず気になったいくつかの食品サンプルをチェックしました。

05_enjoy027_1h_8055.jpg

地下1階から3階まで店内中央の吹き抜け部分にそびえるクッキー型のタワーは、馬嶋屋菓子道具店のシンボル。

次に訪れたのは、この地で三代続く「馬嶋屋菓子道具店」。副社長の櫻井さんに、地下から3階まで続くお菓子の型の世界を案内していただきました。日本の菓子文化を象徴する木型をはじめ、8,000種以上の型や菓子道具を扱う専門店です。戦後60年以上にわたって和菓子の木型を彫り続けた職人さんの話と、ものづくりの精神を受け継ぐ馬嶋屋菓子道具店の今について話を聞きながら、描きたいもののイメージがどんどん膨らんでいきます。

05_enjoy027_1i_8025.jpg 05_enjoy027_1j_8077.jpg

職人の手彫りによる和菓子の「木型」から始まった店の歴史のストーリーに耳を傾ける。


「物語を知ることは絵づくりに直結します。生涯木型を彫り続けた職人さんの話なんて、その歴史とストーリーにグッときますね。心が動いたエピソードは絵としてもしっかり記録に残したいと感じます」と櫻井さんの話を聞きながら、記録写真も念入りに撮影するnaohigaさん。

05_enjoy027_1d_7958.jpg 05_enjoy027_1e_7960.jpg

次に立ち寄ったのは、料理道具の殿堂ともいえる超料理道具専門店「飯田屋」。店内には約8,500種類もの調理道具がズラリと並び、プロ仕様の包丁やフライパンはもちろん、餃子専用コーナーや右利き・左利き別といった珍しい調理器具までそろう専門店です。naohigaさんは、気になっていたスライサーについて、店舗スタッフの籔本さんにさっそく質問。スライサーだけでも数十種類と並ぶ売り場で、解説に聞き入ります。

05_enjoy027_1f_5634.jpg 05_enjoy027_1g_8438.jpg

「販売のプロの的確な説明で思わず買いたくなる気持ちをぐっと抑えて(笑)、描きたいアイテムが決まったら、旅ノートに描く構図を考えます。『これ、欲しい!』と思ったポイントが伝わるように描きたいので、商品のカタチがよくわかるのはもちろん、手際よく野菜をスライスしている勢いみたいなものも一緒に描けるように、斜めのアングルで、籔本さんにお断りしてから写真を撮りました」

 
05_enjoy027_2a_8103.jpg

集中して旅を満喫しながらも、
感動が鮮やかなうちに、旅ノートに描き留める。

合羽橋交差点の角を東へ折れると、真正面にスカイツリーが見えました。 「訪れたお店や気になったアイテムばかりでなく、こうした印象的な景色も大切なポイント。この土地でしか味わえない旅の空気感もエッセンスとして、旅ノートにプラスしたいですね」

05_enjoy027_2b_8134.jpg 05_enjoy027_2c_8137.jpg 05_enjoy027_2d_8125.jpg 05_enjoy027_2e_8108.jpg

上:待ち時間は格好のスケッチタイム。下:喜久鮨で運ばれてきた握り寿司を見て、「さっき見たばかりの食品サンプルを思い出しますね!」と写真を一枚。


ランチは創業111年の浅草田原町「喜久鮨」へ。2階座敷のゆったりとしたテーブル席で料理を待つ間、午前中にめぐった場所を振り返ります。あらかじめ白地図に行きたいスポットを鉛筆で描き入れておいたスケッチブックを広げ、印象的だったお店や描きたいアイテムをさっと鉛筆で描き始めました。

「今回の旅では、下調べをしていくつか気になったスポットやアイテムをモチーフに選んでおいて、事前にスケッチブック上でざっくり鉛筆で割り付けておきました。でも実際に旅先をめぐってみると、心地よく期待を裏切られることってありますよね。現場で実際に感じた空気感を大切にしながら、ここで改めて描きたいものの構図を考えて下描きしていきます」とnaohigaさん。鉛筆を軽快に走らせる音がサラサラと響きます。

「ここで注意したいのが、鉛筆で下描きをする時の筆圧です。現地へ来る前にイメージしていた構図は、実際に旅をすると変わりますし、またカラーペンなどで本番を描いた後に、下描きの線は消しゴムでキレイに消さなくてはなりません。ですから、下描きは鉛筆を軽く持って紙を撫でるようにやさしい筆圧で描くのがおすすめですね。線をきっちり決めすぎず、本番を描く時の自由度を残しておくことも、楽しく絵を描く秘訣です」

05_enjoy027_2f_8170.jpg

外国人観光客であふれる「かまた刃研社」には、伝統的な製法にこだわった本格的な包丁がずらり。


午後からは、創業100年を超える「かまた刃研社」へ。職人が丹念につくった包丁をかまた刃研社で1本1本手作業で研ぎ上げた美しい包丁が並びます。ひっきりなしに訪れる外国人観光客が購入する包丁は、花模様があしらわれたものや、多層鋼材によって生まれる美しい波紋が入った日本特有のデザインのものが多いのだとか。

「初めてかっぱ橋へ来たのはずいぶん前のことですが、その頃と比べて海外からの来訪者がこんなにも多いのは、今回の旅で印象的だったことのひとつです。日本人と柄の好みに違いがあるのも印象的で、そのことも絵に描いておきたいですね」

05_enjoy027_2g_5620.jpg 05_enjoy027_2g_8179.jpg

飲食店専門のユニフォーム店「セブンユニフォーム」では、プロ仕様のエプロンを1枚から買うこともできる。

商店街を北へ向かいながら右手に見えてきたのは、業務用ユニフォーム専門の「セブンユニフォーム」。ビル2階の窓に並ぶコック姿のマネキンに思わず目を奪われます。

「街散策中のインパクトのあるワンシーンとして、旅ノートに描き入れることにしました。想定外であっても、こんな景色に出会ってしまうと、楽しい気分を優先してスペースを割きたくなりますね

05_enjoy027_2g_8203.jpg 05_enjoy027_2h_8236.jpg 05_enjoy027_2i_8262.jpg 05_enjoy027_2j_8253.jpg

本番のメインの線を描くのは、カラー筆ペン「筆まかせ」。強弱のニュアンスがある線が特徴的なnaohigaさんのイラストにぴったりで、「弾力のあるペン先で、思いきって強弱をつけられるので、描いていてとても楽しいです」とnaohigaさん。


描きたいモチーフが溜まってきたところで、デザイン系カフェ「Sensing Touch of Earth」で休憩タイムです。多くの客でにぎわっている店内ながら、これくらいの方がかえって集中できます、とイラストの本番の線をどんどん描き入れていくnaohigaさん。

「旅の臨場感が薄れないうちに、印象深かったことから描いていきます。現地で心に響いたエピソードがあると、描くモチーフも自然と大きくなります。そこは当初考えていたイメージと違っても、感じたままに思いきって描くことが大事。その方が後でノートを見た時に、旅の楽しさと一緒に記憶が鮮明に蘇るんですよ」

05_enjoy027_2k_8250.jpg 05_enjoy027_2k_8271.jpg
05_enjoy027_3a_8279.jpg

旅先で仕上げようと気負わずに
帰宅後にゆっくり描くことで、旅の余韻を楽しむ!

商店街の北端まで散策を終え、近くの公園で木陰に腰を下ろしてさらにひと休み。風に吹かれながら再び旅ノートを開き、午前中から午後へかけてめぐったお店の風景や印象に残ったシーンのディテールを、ひとつずつスケッチしながら細部を描き入れていきます。

05_enjoy027_3b_8296.jpg 05_enjoy027_3c_8298.jpg

面で色を入れていく部分は蛍光ペン「キレーナ」で。2色をうまく使い分けて陰影をつける。

「今回選んだペンの中で、描く順番に注意したいのがこの蛍光ペンです。私は基本的に水性のペンなどで輪郭線を描いた後で着彩をすることが多いのですが、輪郭線がにじんでしまうことがあるんですよね。だから今回は、鉛筆の下描き線に沿って、蛍光ペンで先に着彩をしてみました。蛍光ペンは面で色を入れられるので、旅先でささっと彩色したい時には重宝します」

05_enjoy027_3f_3608.jpg 05_enjoy027_3g_8119.jpg 05_enjoy027_3h_8342.jpg

かっぱ橋道具街®️のシンボル「かっぱ河太郎像」。金色に光る像を前に輪郭線を入れる。

金色に光る「かっぱ河太郎像」は、商店街の守り神のような存在。

「インパクトのあるモニュメントは、『かっぱ河太郎』という名前とともに大きく描きました。日本語の文字をイラストに描くのは、慣れていてもハードルが高めなのですが、まずは鉛筆で薄く『かっぱ河太郎』と書いておいて、中心線のまわりを囲むように輪郭線を描いていくと袋文字がうまく仕上がりますよ」

楽しい街散策の時間はあっという間に過ぎゆき、旅ノートは帰宅後に落ち着いて仕上げるということで、後日、naohigaさんから旅ノートの進捗状況が届きました。

05_enjoy027_3i_9879.jpg

印象深かったスポットやモチーフから徐々に仕上がっていく旅ノート。写真は7割がた描き込まれた状態。

「楽しかった旅を振り返るのは、実はとても楽しい作業なんです。旅の最中には描ききれなかった部分も、鉛筆で薄く下描きをしてあるので、机に向かうと旅の臨場感を思い出して余韻に浸ることができるんですよ」

今回の旅で特徴的だったポイントは、3つのステップで旅ノートづくりに挑んだことでした。
①旅の前に、スケッチブックに白地図を描いて、行きたい場所を鉛筆でマークする。
②旅の最中は、印象的だったことを逃さず描く。
③旅の後、下描きの線に沿って振り返りながら、仕上げる。

特に、楽しかった旅を反芻しながら仕上げる時間は、naohigaさんにとっても、旅ノートづくりの隠れたハイライトとなったようです。

イラストの仕上げにnaohigaさんが描き入れたのは、印象に残ったエピソードや感想やコメント。極細ボールペンで絵の隙間を埋めるように、思いのままに文字を書いていきました。

「旅ノートを描く時にいつもおすすめしているのが、余ったスペースがあると、「空いちゃった!」と焦るかもしれませんが、むしろチャンスだと思って生かすこと。すべてを絵で埋めようと思わずに、印象に残った色や匂い、感覚を文字で書き足したっていいんです。自分自身が旅先で感じた臨場感をできるだけノートに描いて残す。そんな個性的な旅ノートづくりにぜひチャレンジしてみてくださいね」

旅ノートは単なる記録ではなく、自分の目と心で感じた豊かな時間を再び絵でたどるツール。遠出をしなくても身近なエリアの街散策の楽しさを描くことで、特別な旅のひとコマとして記憶に残る素敵な旅ノートが仕上がるのではないでしょうか。


05_enjoy027_3j_8499.jpg

05_enjoy027_3k_8495.jpg

▶︎使った筆記具:

カラー筆ペン「筆まかせ」(極細:ブルー / グリーン)/ 蛍光ペン「キレーナ」(ペールブルー / ペールグリーン / ペールオレンジ) / ゲルインキボールペン「ジュースアップ」(0.5mm:クラシックグロッシーブルー / クラシックグロッシーグリーン)/ 消しゴム / 鉛筆





05_enjoy027_prof_8101.jpg

naohiga さん イラストレーター

1983年生。山形県出身。大学卒業後、グラフィックデザイン会社勤務ののち、フリーのイラストレーターに。雑誌やWeb媒体、アパレルブランド等を中心に活動。

naohigaさんのInstagram公式アカウントはこちら 〉〉〉@naohigaillustrator


///////////////////////////////////////////////////////////////
travel note

▶︎洋食器 ニイミ洋食器店 https://niimi1907.com
▶︎超料理道具専門店 飯田屋 https://kappa-iida.com
▶︎菓子道具 馬嶋屋菓子道具店 https://majimaya.com
▶︎食品サンプル 東京美研 https://www.office-web.jp/tokyobiken
▶︎包丁 かまた刃研社 https://www.kap-kam.com
▶︎寿司 喜久鮨 https://www.kappabashi.or.jp/shops/181
▶︎セブンユニフォーム https://www.seven-uniform.co.jp
▶︎Sensing Touch of Earth https://stoe-cafe.tokyo
▶︎東京合羽橋商店街振興組 https://www.kappabashi.or.jp ///////////////////////////////////////////////////////////////


〈その他関連記事を読む〉
かく、を楽しむ:
イラストレーターnaohigaさんが描く 旅ノート[鎌倉編]〉〉〉「かく、を楽しむ」 イラストレーターnaohigaさんが描く 旅ノート[鎌倉編]〉〉〉「かく、を楽しむ」 「失敗知らずの「旅ノート」術♪」〉〉〉「かく、を楽しむ」

  • 1

  • 2

  • 3

この記事をシェアする

  
かく、がスキ 公式SNS
TOPページへ戻る
パイロット公式サイトへ