文具ソムリエール 菅 未里 さん 「クリエイティブな作業は手書きの方がしっくりきます」

インタビュー

2021/07/28

文具ソムリエール 菅 未里 さん 「クリエイティブな作業は手書きの方がしっくりきます」

文具ソムリエール 菅 未里 さん インタビュー

毎日が楽しくなる文具を独自のスタイルで紹介し、文具ファンからカリスマ的な人気を集める菅未里さん。テレビや雑誌などのメディアでもご活躍中の文具のエキスパートです。そんな菅さんに、筆記具にまつわるエピソード、そして手で書くことの魅力についてインタビューしました。

「小中学生時代、自分はこれが好き!
と意思表示できるのは、文具だけだった」

―今回はお仕事部屋も公開してくださってありがとうございます。今日は菅さんの文具愛についてお話をお聞かせください。それにしても想像以上にたくさんのコレクションですね。どのくらいあるのでしょう?

実は、集めているつもりはなくて気に入ったら買ってしまうので、気づいたら増えていたという感じです(笑)。コレクターの方は文具の記録をとるケースも多いと思いますが、私は数えたことがないんですよね。


―なるほど自然に増えていったのですね。そもそも文具の魅力に目覚めたのはいつのことですか? 何かきっかけがあったのでしょうか。

一番最初は「おもしろ消しゴム」でした。サッカーボールの形をした消しゴムを小学校に持っていって、それがクラスメイトと仲良くなるきっかけだったことを覚えています。パイロットさんの消しゴム「フォームイレーザー」を中学生のときに愛用していたんですよ。好きな男の子が使っていて「私も『フォームイレーザー』なんだよね」なんて、話の糸口にしていました。

小中学生時代は、制服もランドセルの色も学習ノートも全部ルールが決まっていて、自分の好きなものを持って行けるのは文具だけだったんですよ。だから「自分はこれが好き! 」って意思表示できる文具に夢中になりました。中学生のときは、皆、シャープペンシル「ドクターグリップ」のフレフレ※1でシャカシャカやっていましたよ。「ハイテックC」も流行っていました。「細かく書くのが正義!」みたいな空気があって、皆「ハイテックC」で手紙を書いていましたね。
※1 フレフレ:ノックしなくても振るだけで芯が出る機構。

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―菅さんの文具愛は小中学校時代から続いているのですね。今、時代がどんどんデジタル化して、スマートフォンやパソコンでのコミュニケーションも増えていると思いますが、昔と比べて手書きをする機会が減るなど、何か変化はありましたか?

正直、私は変わっていないように感じています。もちろんGoogleカレンダーなどのデジタルツールも使いますが、手帳も使います。文具企画のアイデア出しやライブ配信のネタ出しなどクリエイティブな作業をするときはすべて手書きなんですよ。

頭の中で考えていることをいきなりパソコンで書くと、表現がうまくまとまりません。一方で手書きはアイデアがわいてくるのを妨げないし、何よりラクなんです。手書きしない日はありませし、とにかく手で書いていますね。

 
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「アイデア出しはバスルームで。
誰にも邪魔されない空間で、企画を練っています」

―ところで、クリエイティブな手書き作業をするときは、どんな筆記具をお使いですか?

普段はいろいろなペンを使っているのですが、実はゲルインキボールペン「ジュースアップ」が大好きです。私はお風呂の中でアイデア出しをすることが多いので、水性顔料インキの「ジュースアップ」なら色が流れないんですよ。染料インキだと流れちゃう。細書きができて書き味もよくて、アイデアを出すには最適ですね。

―確かにお風呂って、ひとりだけになれるリラックスタイムですよね。

仕事部屋にこもって集中していても仕事の電話がかかってきたりして、結構遮られることが多いんです。ですからひとりになれるお風呂でのアイデア出しはすごくいいです。もちろんノートは湿気を吸ってシワシワになりますよ。SNSやライブ配信などで、このお風呂でのネタ出しの話をすることもありますが、「あくまでも水まわりでの使用は自己責任で」とお伝えしています。
※ 水まわりで筆記具をご使用の場合、ペン先の錆びや不具合につながる可能性もあります。

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「 『ジュースアップ』が好きすぎて、デスク正面の専用の引き出し(写真右)には、常に20本くらいストックがないと不安なんです」と目を細めながら「ジュースアップ」愛を熱く語る菅さん

そのときの気分でいろいろ使っていますが、はっきりした派手な色が好きですね。 アイデア出しのときは筆記具の種類や色を限定せず、黒以外のペンで書いています。 逆に手帳は「ジュースアップ」0.3ミリの黒! と決めています。

―どうして黒1色に?

気が散っちゃうんですよね。いろいろな色が混じっていると。だから黒1色に限定しています。それに、手帳をのぞき込んで見られることを考えて、あえて地味にしているという理由もあります。手帳がカラフルだと解説しなきゃいけなくなりますしね。

―その手帳はどんな風に使っているのですか? スケジュール管理などでしょうか。

手帳はもっぱら「TO DOリスト」の管理に使っていますね。 例えば、アイデア出しをいつまでにして、その後に担当者さんへ連絡して、ここまでに撮影してといった感じで全部書いておかないと忘れちゃうんです。

―それを常にジュースアップ0.3ミリの黒で? そうなると「ジュースアップ」の使用頻度はとても高そうですね。

そうなんですよ。だから切れてしまうと嫌なのでいつも20本以上ストックしていて、「ジュースアップ」専用の引き出しもあるくらいです。「ジュースアップ」のペン先“シナジーチップ”はくっきりはっきり書けてとても好きなんですよね。ゲル系のインキだとジワッと広がることがありますよね。でも顔料インキ&“シナジーチップ”の場合、インキがキュッとしまるような書き味の感触がとてもよくて。私のライブ配信で“シナジーチップ”の話題になると、いつもフォロワーの方々もとても盛り上がっています。

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「文具の世界はいま、広がりを見せています。
これからもその魅力を伝えていきたいですね」

―万年筆もたくさん持っていらっしゃると思いますが、普段どんなシーンで使っていますか?

うーん、何に使ってるんだろう? あまり意識せずに使っているので、手紙を万年筆で書こう!とか決まったルールがあるわけではなく、このインキはこの万年筆に入れて書いてみようかな、という自然な感じです。かなり本数はあるのですが、常にインキを入れているのは5、6本でしょうか。どのインキを入れたか分からなくならないように、インキの名前と入れた日付をシールに書いてコンバーターに貼っています。

―お仕事柄、文具全般幅広くアンテナを張っていらっしゃると思いますが、筆記具と一般文具、どちらが多いでしょう?

やっぱり数で言えば筆記具が多いでしょうね。 文具売場の販売員だった時代に、筆記具を担当していたこともあって、一番興味があるのはやっぱり筆記具です。 筆記具は、価格帯も1本100円のものから何十万円もするような高級なものまでものすごく種類も多く、使用シーンも幅広くて本当に興味がつきません。

―就職するときは迷いなく文具売場を選んだのでしょうか?

文具フロアを希望して大型専門店に入ったのですが、はじめはインテリアフロアでカーテンを販売していました。 どうしても文具フロアに行きたくて、外堀から攻めるつもりで、会社にも許可をとって副業で文具ソムリエールとしての活動を始めたんです。 そのうちに、最終的に文具フロアで筆記具を担当することができました。 文具の中でも筆記具は花形アイテムで、お客様と対面コミュニケーションが発生する唯一の売場でもあります。 例えばシャープペンシルの芯は、本当にたくさんの種類があるのに試し書きができないんですよ。 だから私自身が各社のシャープペンシルの替え芯を全部買って試してみて、お客様にオススメできるポイントを研究していました。 1個100円程度のアイテムですが、そこまでこだわって文具を買える日本ってすごいな! と思います。

―シャープペンシルの芯を全メーカー試されたと! それはすごいですね。その熱意が今のお仕事につながっているんですね。

好きなものは自分の中にとどめておくのではなく、「こんなにいいものがあるよ!」と人に紹介したい欲求があるのだと思います。万年筆も、自分の万年筆をウエストポーチにたくさん入れて、機会があればお客様に試し書きしていただけるように常に携帯しておくなど、販売員のときから自分なりの伝え方を模索していました。


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左:菅さん手づくりの万年筆インキの色見本。手帳のレフィルに線を引いて、色の名前と色を塗ってある。右:メディア出演時の台本など人目に触れる資料は、書き消しできるボールペン「フリクションポイントノック04」などを使用。


―文具の専門家としての菅さんの目から見て、今の文具事情はどう映っていますか?

デジタル化の波に押されて年々縮小傾向であるのは事実ですよね。 とはいっても今まで実用品で男性の世界だった文具・筆記具が、だんだん趣味の世界に広がったり、「女子文具」という言葉がささやかれ始めたりして、使用シーンも増えているという実感があります

―最後に、文具ソムリエールとしてこれからチャレンジしたいことをお教えください。

今、文具という定義がものすごく広がっていると思います。 日々のいろいろなお悩みに応えるアイテムも多くて、家事に役立つものもたくさんあります。そんな新たな商品開発にも貢献できたらうれしいですね。そして地道な活動になるかもしれませんが、これからも文具について熱く語りながら、その魅力を伝えていきたいと思っています。

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菅 未里(かん みさと)さん 文具ソムリエール
大型専門店の文房具販売・仕入れ担当を経て、文房具専門家として独立。国内外で商品や売り場のコンサルティング・企画・監修、また、テレビや雑誌など各種メディア出演、執筆、イベントや講演への登壇を精力的に行なっている。日経MJなど連載多数。著書に『私の好きな 文房具の秘密』(エイ出版社)、『仕事を効率化する ビジネス文具』(ポプラ社)、『毎日が楽しくなる きらめき文房具』(KADOKAWA)、『文具に恋して。』(洋泉社)がある。文房具を紹介するサイト「STATIONERY RESTAURANT」を運営。

菅未里さんの公式サイトはこちら 〉〉〉〉「STATIONERY RESTAURANT」



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『私の好きな 文房具の秘密』(エイ出版社)

文具ソムリエールとして多くのメディアで活躍する菅未里が、誰もが使ったことのある17種類の文房具の秘密を探ったら、そこには知られざる物語が秘められていました。ボールペンやノート、はさみといった日常的に使われる文房具は、実用品としての扱いを受けることが多く、あまり関心を持たれていません。でも、それらの文房具にも開発の裏話やあまり知られていないドラマがあります。菅未里自らが17の文房具メーカーを訪ね、開発時のエピソードや製品にこめられた秘密を明らかにしました。知っているようで知らなかったあの文房具の「秘密」が満載の一冊です。

エイ出版社 1,760円(本体価格1,600円)

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