ホッピービバレッジ社長 石渡 美奈 さん「万年筆で書くことは、心の状態を測るバロメーターです」

2022/06/10

ホッピービバレッジ社長 石渡 美奈 さん「万年筆で書くことは、心の状態を測るバロメーターです」

ホッピービバレッジ代表取締役社長 石渡 美奈 さん インタビュー

74年にわたって愛され続ける元祖ビアテイスト清涼飲料水「ホッピー」の製造販売会社、ホッピービバレッジ。その3代目代表取締役社長として「看板娘 ホッピーミーナ」を名乗り、自ら広告塔として活動する石渡美奈さんは、万年筆愛好家としても知られています。そんな石渡さんに、手で書くことと万年筆への愛を語っていただきました。

「手書きはもちろん、デジタルでもラジオでも
とにかくメッセージを伝えることが好き」

― 日頃からホッピービバレッジの社員の方々へのメッセージを、万年筆で手書きしていらっしゃるとお伺いしましたが、どんなときに書いていらっしゃるのでしょうか?

毎月のお給料日には、全社員へ向けた共通メッセージを万年筆で書いて渡しています。賞与のときや永年勤続のときは、ひとりひとりに宛てて直筆のメッセージを書いています。メッセージを書くことって本当に楽しいですよね! やはり手書きの手紙はとても喜んでいただけますし、私自身もいただくとうれしいです。社員へのメッセージはもちろんですが、手紙もよく書いています。もっと筆まめになりたいくらいなのですが、ちょっとした隙間時間を見つけて書くようにしています。

ホッピービバレッジでは、永年勤続の賞品は万年筆なんですよ。例えば10年勤続なら10という数字にちなんだ万年筆を選んでプレゼントしています。選んでいて自分自身も楽しいんですよね(笑)。ちゃっかり自分のペンも買ってしまったりして......。万年筆という同じアイテムでもそれぞれに表情が違うので、選ぶたびに発見があります。社員に限らず、友人知人の誕生日やちょっとした記念日に万年筆をお贈りする機会は多いですね。



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左:社員の勤続記念に石渡さんがプレゼントした万年筆とメッセージ。「とっても書きやすくて気に入っています」と広報のご担当者。右:パイロットの万年筆「キャップレス」と「ホッピー」と一緒に記念写真をパチリ。


― いつも万年筆を使っていらっしゃると、まわりの方への影響力もありそうですね。

そうですね。この間も幼馴染の友人が新たなお店を開くときに、「お客様へのご挨拶状を万年筆で書いてみたい」と相談を受けて、万年筆専門店へ一緒に選びに行きました。それから彼女もすっかり万年筆にハマっていましたね。宛名はすべて万年筆で手書きしていらしたから、受け取られた方々はきっと喜ばれたことでしょうね


― 今はメッセージもメールやSNSなどデジタルツールでのやりとりも増えましたが、石渡さんは、手書きとデジタルツールをどのように使い分けていらっしゃいますか?

もちろんデジタルツールも日々使っています。私がこの会社へ入った当時、低迷していた「ホッピー」を復活させる一因となったのがブログでしたから、インターネットの世界はホッピービバレッジと親和性が高いんですよ。ホッピーファンの方からは、SNSなどデジタルツールでの発信に対してもいつも多くの反響があります。

どちらにも共通しているのは「メッセージを伝える」ということ。手段として何を使うかは別として、思いをメッセージにして伝えることが好きなんです。だから、ニッポン放送のラジオ番組のパーソナリティも16年間続けています。おかげさまで2021年の夏で番組は放送4000回を突破しました。ラジオも自分自身の声で伝えられるという点では、万年筆でメッセージを書くのと本質的に同じなのではないかと思います。人となりやあたたかさを、有機的に伝えられるという手応えがありますよね。

 
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「長年受け継いでいけることも
万年筆を使う喜び」

― もともと万年筆がお好きだったのでしょうか?

実は、万年筆を使うようになったのは大人になってからなんです。でも文房具は子どもの頃から大好きで、小学生の頃は消しゴムをコレクションしたり、中学生になると当時は珍しかった輸入雑貨店に通い詰めたりと、とにかく人と違う文房具を集めて使っていました。


― 万年筆を使うようになったきっかけをお教えください。

私は筆圧が強かったので、万年筆は合わないだろうって思い込んでいたんです。でも18年ほど前に雑誌に掲載されていた「筆圧の強い人向きの万年筆」の記事を読んで、すぐに文房具店へ買いに行ったんです。するとそのお店の方がとても熱心に教えてくださって……。「初心者ならこれがいいですよ」と勧められたのは、ドイツ製のエントリーモデルの万年筆でした。それがはじめての一本です。



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それをきっかけに文房具専門店へ通うようになって、そしてついに禁断の沼、万年筆専門店へ足を踏み入れてしまったんです! お店の方には、万年筆のイロハからインキの楽しみ方まで、いろいろ教えていただきました。

仕事で地方へ行くと、時間を見つけてはその地域の文房具店へも足を運んでいます。なぜだか引き寄せられちゃう。万年筆についてお店の方とのやりとりをするのも、とっても楽しいですよね。

以前、イタリアの片田舎の文房具店で買い求めたパイロットさんの「キャップレス」は海外限定モデルでした。「これは日本では買えないのよ!」ってひとりで大興奮して、「左から右まで全色ください」と思わず大人買いしてしまいました(笑)。海外の旅では、日本で手に入らないものに出会えたりすることも楽しみですね。


― 思い入れの深い万年筆はありますか?

文房具店さんの周年記念の限定モデルは、つい手が伸びてしまいますね。他にも思い入れのあるペンはたくさんありますが、離れて暮らしていた祖母へ宛てた葉書を書いていたイタリア製のペンには特別な思いがあります。2009年に亡くなるまで毎日のように書き続けていました。最後は、天国までの道がつまらなくないように、棺の中に何十枚も書いて入れました。不思議なことに、その後すぐにお役目が終わったとばかりにペン先が壊れちゃったんです。ペン先を新しくして今もずっと大切にしていますけれどね。

そして、父が使う万年筆も私がプレゼントしていました。3年前に亡くなったのですが、今は私がその万年筆たちを使っています。こうして受け継いで長年使っていけることも、万年筆を使う喜びのひとつです。

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「朝から晩までほとんどすべて
万年筆で書くことが日常です」

― いつもご愛用の万年筆をぜひ拝見させてください。

ここにお持ちしたのは、今インキを入れている万年筆たちなのですが、これは私のコレクションの中のほんのひと握り。恐ろしくて数えてないのですが、万年筆専用の棚に400本以上はあると思います。その中から3カ月に1回くらいの頻度で、季節に合わせてペンを30本程度選んで、そのペンに合う色のインキを入れて使うようにしています。例えば春なら、ピンク系や若草色のペンにピンク色のインキを入れて季節感を楽しんだり、あとは新しいペンを季節に合わせておろしたりしています。本当はマンスリーで入れ替えたいくらいなんですけれどね。

入れ替えのとき、どのペンを選んでどのインキを入れたかを小さなノートにメモしています。常連さんみたいなペンもあるんですよ(笑)。パイロットさんの「キャップレス」は常に3、4本必ずありますね。携帯してさっと取り出して書きやすいですから本当に便利。ペン先の感触もとてもやわらかくて好きなんです。



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約30本のうち、半分はブルー系やセピア系などのインキを、残り半分にはカラフルなインキを入れているという。


― たくさんある中から、どんな風にペンを使い分けていらっしゃるのですか?

私の場合、メッセージはもちろん、仕事の書類への書き込みや付箋などちょっとしたメモを書くのも、それはもう朝から晩までほとんどすべて万年筆で書いています。ですから、毎日この中から日常的に使うペンを3、4本選んでペンケースに入れて携帯しています。ブルー系以外にもカラフルなインキを入れた万年筆はカラーボールペン感覚で使っているんですよ。限定品や思い入れの深いものなど、あまり外へ持ち出さずに自宅で使うペンもあります。どんな場面で使うか、そのときの気持ちや紙の表情に合わせて、そして手紙などは相手に合わせてどのペンを使うか考えています。

ちょっと最近使っていないなというペンは、ご機嫌伺いで使ってみるんです。この作業を「点呼」と名付けていて、「みんな元気? 大丈夫ー? 機嫌悪くしてない?」なんて話しかけながら書いています(笑)。そうすると案の定、思いきり機嫌の悪い子がいたりするわけで、「ごめんね」と語りかけながら使ってあげる。たまにインキを通してあげないと、ペン先がドライアップしてしまいますからね。意味もなく紙に文字を書いているだけでもとっても楽しいんです。



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左:その日に携帯する3、4本を選んでペンケースに。右:予定を、書き直すことができるようスケジュール帳はシャープペンシルで。「基本、私の生活は万年筆とシャープペンシルの2択です。すごくシンプルでしょう? 」と石渡さん。

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左:インキを入れ替えるたびに、どのペンにどのインキが入っているか記録しているノート。右:万年筆のお手入れは、コットンを詰めた試験管に水を張ってインキを抜く。そのプロセスも楽しんでいるという。


― これだけ多いとお手入れも大変ですよね?

そうですね。入れ替えのときは、すべてのペンのインキを抜いて、きちんとドライアップさせてから所定の場所へしまっています。ペン先の洗浄・乾燥まで入れると1週間くらいはかかるでしょうか。水を張ったガラスの試験管にペン先を1本ずつそっと沈めてインキを抜くのですが、お手入れしている間もとてもきれいなんですよ。

インキのコレクションもかなりの数で、床から天井までの本棚20段くらいをインキが埋め尽くしています。ブルーひとつとっても、メーカーさんごとにいろいろなニュアンスの色がありますよね。それを見てしまうと、いろいろな色を集めて季節ごとに使い分けたくなるわけです(笑)。



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― 最後に、石渡さんにとって万年筆はどんな存在か、一言メッセージとサインを直筆でお願いします。

そうですね、「万年筆は、心の元気のバロメーター」という言葉にしたいと思います。これね、本当なんですよ! 万年筆で書いてみると心の状態が分かるんです。心が安定して穏やかでないと、万年筆のお手入れってなかなかしないものなんですね。万年筆が整わないと、気持ちが整わない。だから、きちんと万年筆が整っていると、毎日とても元気に仕事ができるんです。

万年筆は、武士にとっての刀と同じだと常々思っています。ペン先が固まって書けないとすごく心が痛む。それは刀が錆びて使えないのと同じです。万年筆と向き合ってインキを入れ替えたりお手入れしたりして、万年筆を使っていると心が整っていきます。やっぱり万年筆は、私の心のバロメーターですね。



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石渡 美奈 さん ホッピービバレッジ株式会社 代表取締役社長
立教大学文学部卒業後、日清製粉(現:日清製粉グループ本社)に入社。人事部に所属し、1993年に退社。広告代理店でのアルバイトを経て、1997年に祖父が創業したホッピービバレッジに入社。広報宣伝を経て、2003年取締役副社長に就任。2010年より現職。早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了(MBA)、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(SDM修士)。ニッポン放送『看板娘ホッピーミーナのHoppy Happy Bar』パーソナリティ、2015-2016年度東京愛宕ロータリークラブ会長、一般社団法人新経済連盟 幹事、学校法人立教学院評議員、早稲田大学商議員、Super GT 300クラス HOPPY team TSUCHIYAチームオーナー、一般社団法人全国清涼飲料連合会 環境委員会所属。著書に、『社長が変われば会社はかわる!』(阪急コミュニケーションズ)他多数。

ホッピービバレッジ株式会社公式HPはこちら 〉〉〉ホッピービバレッジ株式会社

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「看板娘ホッピーミーナのHOPPY HAPPY BAR」ニッポン放送

まもなく一日が終わろうという夜10時前。ホッと一息ついているアナタに向けて、ホッピーミーナが、明日の活力を充電するための秘訣をお届けするラジオ番組。ホッピーミーナとは、ホッピーのPRのために日本全国を駆け回っている“空飛ぶ看板娘”こと、ホッピービバレッジの代表取締役社長・石渡美奈。垣花正アナウンサーと一緒に、軽快で元気なトークと、聴くだけでハッピーになる話題を提供している。2021年に番組15周年を迎え、放送4000回を突破。

ニッポン放送:毎週月~金 21:57~22:00 / 東海ラジオ:毎週月~金 21:57~22:00 / ラジオ大阪:毎週月~金 20:26~20:29

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