船上で語り合った創業者ふたりの夢が 「パイロット」の名前の原点。

2022/03/25

船上で語り合った創業者ふたりの夢が 「パイロット」の名前の原点。

海の向こうを目指した創業者ふたりの夢。

さっそくですが質問です。皆さんは「パイロット」と聞いて、何が真っ先に思い浮かびますか? きっと飛行機の操縦士、パイロットを想像する人が多いのではないでしょうか。

社名である「パイロット」の名前の由来は、飛行機のパイロットではありません。今回の「かく、を学ぶ」では、なぜ「パイロット」という名前なのか? その名に秘められたふたりの創業者の熱い夢と友情の物語をお届けします。


03_knowledge006_01.jpg 03_knowledge006_02.jpg

今から120年ほど前の1900年代初頭、船の上で熱く夢を語り合うふたりの船乗りがいました。それが、若かりし頃のふたりの創業者、並木良輔と和田正雄です。

外国へ行く貨物船上で出会い、意気投合したふたりはともに世界の海を航海した仲間です。当時、ふたりは、日本に着いた船がたくさんの輸入品を港で降ろした後、空荷のまま帰って行くという現実を目にして、「いつか必ず、日本から世界に誇れるものを送り出したい」と、熱く夢を語り合い、固い友情で結ばれていた間柄でした。


03_knowledge006_03.jpg

その後、並木は母校の東京商船学校で教授に、和田は郷里で実業家へと別々の道を歩むことになりました。

当時、並木は製図の授業で線を引くときに「烏口(からすぐち)」という道具を使っていましたが、インキを補給するのが煩わしくてとても不便でした。そこで探究心旺盛な並木は、自宅につくった小さな研究室でそれを改良し、軸内部に墨汁を貯めておけるオリジナルの「並木式烏口」を発明して、特許を取得したのです。


03_knowledge006_04_2.jpg

一方、1910年代の日本では外国製の万年筆が人気を博していました。先端がすぐに減ってしまう烏口と違って、万年筆のペン先はとても硬くて摩耗しにくく、長年にわたって使い続けることができると評判です。同僚の教授が使っていた英国製の万年筆を手にして、並木の発明家魂に火がつきました。

「外国製の万年筆のようにペン先の摩耗が少ない、純国産の万年筆をつくってみせる!」


03_knowledge006_05.jpg

「パイロット」の名前の由来について続きはこちら 〉〉〉次のページへ

 

業界の「水先案内人」を目指し、船乗りの心意気を商品名に。

並木は寝るのも食べるのも忘れるほど、研究に没頭しました。

金ペンの先端についているとても硬い金属は、一体何という素材か? そしてそれはどこで手に入るのか?

頭を抱え込むような難問が次々と降りかかるなか並木がふと目に留めたのは、船乗りの必需品である「羅針盤」の針でした。それが大きなヒントとなり、金ペンの先端に使われている硬い金属の正体が「イリジウム」であるのを突き止めることができたのです。並木が元船乗りでなければこの重要なヒントに気づくこともなく、研究を断念していたかもしれません。

そして苦労に苦労を重ねた結果、このイリジウム合金を金ペンの先端に溶接することに成功。次の難問は、インキが流れる道をつくるために先端に切れ目を入れることでした。金ペンの先端があまりにも硬いため、思うようにカットできないのです。資金はもう底をついてしまいました。


03_knowledge006_06.jpg

「これ以上一歩も前に進めない」と窮地に陥った並木は、船を降りてからも親交が続いていた和田に相談。すると、親友が困っていることを知った和田は、多額の資金をすぐに並木へ送金したのです。こうして暗礁に乗り上げていた研究は大きく前進。1916年、ついに念願の純国産万年筆が完成したのです。

「よし、このペンは業界の『水先案内人』となるよう『パイロット』と名づけよう!」

「水先案内人」とは、操縦が難しい狭い海峡や港などで、大きな船の前に立ち、安全に航行できるよう誘導する案内人のこと。その案内人を船舶業界では「パイロット」と呼びます。日本初の純国産万年筆は、船乗りであった創業者たちの「業界の水先案内人でありたい」という想いを込めて「パイロットペン」と名づけられました。


03_knowledge006_07.jpg

そして1918年、並木は和田とともに「株式会社並木製作所」を東京・日本橋に設立し、本格的に純国産万年筆の製造と販売を開始。品質の良さから「パイロット」は万年筆ブランドとしてその名が知られるようになり、数年後には海外へ向けての輸出もスタートさせました。

そして、創立から20年が過ぎた1938年には「パイロット萬年筆株式会社」と社名を改め、さらに1989年に「株式会社パイロット」、2003年に「株式会社パイロットコーポレーション」と改称し、今に至ります。「パイロット」という社名には、一世紀以上前の日本で海の向こうを目指した若き創業者たちの熱い想いが秘められているのです。


03_knowledge006_08.jpg

パイロット「100年の歴史」はこちら 〉〉〉パイロット100周年記念サイト


〉〉〉資料の印刷はこちら



〈関連記事を読む〉
〉〉〉メイドインJAPANの蒔絵万年筆が、100年前に誕生した理由。 〉〉〉ローズタウン平塚をめぐり、 バラ香るパイロット通りへ。

  • 1

  • 2

この記事をシェアする

  
TOPページへ戻る パイロット公式サイトへ