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2026.09.25

学生たちの声に耳を傾けて生まれた蛍光ペン「キレーナ」の開発物語。

蛍光ペンを使う人が抱えるさまざまな不満を解消した蛍光ペン「KIRE-NA(キレーナ)」。「キチント トトノウ」をコンセプトに2024年に発売された、新感覚の蛍光ペンです。蛍光ペンのメインユーザーである学生たちの声に耳を傾けながら、約6年という歳月をかけて誕生したキレーナの開発物語をお届けします。

6年の歳月をかけて「従来の使いにくさ」を解決した蛍光ペン

 まっすぐ線が引けない」「なかなか乾かなくてノートや手が汚れる」......。これらは、蛍光ペンを使う中で、多くの人が一度は経験したことがある悩みです。しかし、そんなちょっとした不便さは長い間「そういうもの」として受け入れられてきました。

 蛍光ペン「キレーナ」開発の出発点は、最先端技術でも斬新なアイデアでもなく、こうした当たり前の不便さを見つめ直すことでした。学生たちのリアルな声をもとに、一つひとつの課題と向き合いながら、約6年にわたる試行錯誤を重ねて誕生したのです。


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「線が曲がる」「手が汚れる」。
中高生のリアルな悩みが開発の出発

 開発当時、パイロットの蛍光ペンには「スポットライター」と「フリクションライト」がありましたが、いずれも主なユーザーは社会人でした。一方で、中高生や大学生が中心となる蛍光ペン市場では、競合メーカーの商品が広く浸透していて、新しい価値を打ち出すのが難しい状況にありました。

 そんな中で、2018年に立ち上がったのが「学生にもっとも選ばれる新しい蛍光ペン」をつくるという新プロジェクトです。

 まず初めに行ったのは、蛍光ペンのメインユーザーである中高生へのリサーチでした。すると、「きれいな線が引けない」、「書いた文字の上に線を引くと、にじんでしまう」、「ペン先が、ボールペンのインキで汚れる」、「定規にインキが付いてしまう」、「なかなか乾かなくてノートや手が汚れる」......、と予想以上に多くの不満の声が集まり、それらを整理していくと大きく二つの課題に集約されました。

 一つ目は、「きれいな線が引けない」という筆記性能の課題です。均一な線をまっすぐ引きたくても、書き出しが欠けたり太さがブレたり、線が曲がったりと、きれいな線を引くのが難しいという課題でした。近年は、ノートをきちんときれいにまとめたい中高生が多く、丁寧にノートを書きたい学生にとって、「きれいな線が引けない」ストレスは大きかったのです。

 二つ目は、インキに関する課題です。蛍光ペンは、インキに水分を多く含むため、ボールペンやシャープペンシルで書いた文字の上から線を引くと、文字がにじんだり、ペン先が汚れてしまったりすることも少なくありません。また、インキが乾くまでに時間がかかるため、インキがこすれて手やノートが汚れたり、定規に付いたインキでノートの別の場所が汚れたりすることもありました。さらに、筆跡にムラができたり、引き終わりにインキ溜まりが発生したりするといった声もありました。

 こうした不満のどれもが、これまでは「仕方がない」とあきらめられてきたことでした。

 そこで開発チームは、「従来の蛍光ペンが抱える課題を、一つひとつ根本から見直し、すべて解消しよう」と目標を掲げました。

 「まっすぐきれいな線を引けること」、そして「書いた文字がにじまず、ペン先や手、ノートを汚さない」という二つの課題を同時に解決するため、まったく新しい蛍光ペンの開発が始まったのです。

 しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。「きれいな線を引けるようにしたい。でも誰もが自然に使える形でなければ意味がない」。「インキの乾きを速くしたい。でも裏抜けはさせたくない」。理想と現実の間で、技術者たちは数え切れない試作と検証を繰り返すことになりました。

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「できそうで、できない」を形に。
長年かけてたどり着いた「キチンと引ける」独自機構

 一つ目の課題である「まっすぐきれいな線が引ける蛍光ペン」を実現するために、開発チームは「これまでにないペン先の形状」を新たに設計するべく、ペン先の構造そのものを見直すことから始めました。数えきれないほどの試作を繰り返し、最終的にたどり着いたのが、「キレーナ」最大の特徴であるペン先の新機構「キチントガイド」です。

 「キレーナ」のキャップを開けると、まず目に入るのが特徴的なペン先。やわらかくしなる薄いチップの両側に透明なパーツが付いている唯一無二の形状です。この樹脂製のパーツがチップを両端から支えることで、安定してまっすぐ線を引ける構造となっています。

 線を引く際には、この「キチントガイド」を紙面に当てることで、ペン先が安定し、そのままペンを動かせば、誰でも一定の幅できれいな線を引くことができるのです。小さな部品ではありますが、紙に触れるわずかな角度や形状の違いが使いやすさに大きな影響を与えるため、0.1ミリ単位の調整を重ねながら試作と検証を重ねました。


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 また、ペン先のチップにも特徴があります。一般的な蛍光ペンは比較的硬い素材のチップが使われていますが、「キレーナ」は、やわらかくしなるナイロン素材を採用。このやわらかいチップが紙面に当たって適度にしなり、「キチントガイド」がペン先を支えることで、きれいな線を引けます。

 「キチントガイド」と「やわらかいチップ」。この二つの組み合わせによって、まっすぐきれいな線を引きやすくなったのです。

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「キレーナ」ペン先のチップには、やわらかくしなるナイロン素材を採用。


 特に効果を発揮するのが、教科書や参考書に線を引くときです。教科書や参考書は、本を開くと中央部分が盛り上がり、紙面が平らになりません。そのため一般的な蛍光ペンではペン先が安定せず、線が曲がってしまうことがあります。しかし「キレーナ」は、やわらかいチップが紙面にフィットし、「キチントガイド」がペン先を支えることで、こうした曲面にもきれいな線を引けるようになっています。


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きれいな線を引けるだけでは終わらない
さまざまなメリット

 「キチントガイド」の効果は、線をまっすぐきれいに引くことだけではありません。従来の蛍光ペンは、チップへ筆圧が直接かかるため、書いた文字を強くこすってしまっていましたが、「キレーナ」には「キチントガイド」があることで、筆圧が分散して安定し、ペン先に過剰な圧力がかかるのを防いでくれます。そのため、ボールペンやシャープペンシルで書いた文字の上から線を引いても、書いた文字がにじみにくくなりました。また、ペン先に、インキが付着して汚れることも軽減されます。


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 さらには、定規で線を引くときも、「キチントガイド」があるおかげでペン先が直接定規に触れることがなくなり、定規についたインキで周囲が汚れる心配もなくなりました。


「速く乾く」と「裏抜けしない」
の両立という難関

 一方、二つ目の課題である「速乾インキ」の開発は難航しました。例えば、紙に染み込みやすいインキにすれば、紙の表面は早く乾きますが、それは紙の裏側までインキが染みて「裏抜け」してしまう原因になります。逆に裏抜けを防ごうとすると、乾くまでに時間がかかり、定規や手、ノートを汚してしまうのです。

 「乾きを速くする」でも「裏抜けさせない」という相反する条件を両立するために、インキの開発担当者は、成分や配合を少しずつ変えながら試作・試験・調整を繰り返しました。その地道な積み重ねの先に完成したのが、コピー用紙なら約1秒で乾くという蛍光ペン専用の「速乾顔料インキ」です。

 新しい速乾インキにより、ペン先はもちろん、手やノート、定規なども汚れにくくなりました。さらに、やわらかなナイロン製チップが線を引き終えた部分に溜まったインキをスポンジのように吸収することで、引き終わりだけ色が濃くなったり、インキが裏抜けしたりする現象も抑える相乗効果も生まれました。


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 とはいえ、まったく新しいインキの開発に成功したからといって、すぐに製品化できるわけではありません。時間の経過で変色しないか、長期間保管しても性能が維持できるかなど、さまざまな品質試験をクリアしなければ、市場に送り出すことができません。開発チームは、本格的な生産が始まる直前まで根気強く改良を続け、ようやく納得できる速乾インキが完成しました。

 こうして、「キチントガイド」と「速乾顔料インキ」という二つの独自技術が結びつき、きれいな線を引きやすく、インキのにじみや汚れも気になりにくい、新しい蛍光ペン「キレーナ」が誕生したのです。


「整う」という一本の軸が
ぶれなかった理由

 開発期間中は多くのスタッフが関わりましたが、方向性が揺らぐことはありませんでした。その理由は、「整う」というコンセプトがプロジェクト初期から一貫して共有されていたからです。

 開発当初は、「まっすぐきれいな線が引ける」「速乾インキ」という機能面に加え、トレンドを意識したインキカラーの展開で差別化する案も検討されていました。しかし、開発担当者とデザイナーが議論を重ねる中で、「キレーナ」の本質的な価値は新しい色の提案ではなく、ノートや手帳を気持ちよく整えることにあるのではないかと考えるようになったのです。

 「きれいな線が引けることでノートが整う。ノートが整うことで、頭の中も整う」。こうした発想から生まれたのが「整う」という考え方でした。この考え方は、商品開発からデザインまでを貫く一本の軸となっていきます。


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 その価値を一言で表したのが、「キチント トトノウ」というキャッチコピーです。

 例えば、開発当初のデザインではクリップ部分がやや尖った形状でしたが、余計な装飾を潔く削ぎ落とし、正円と直線だけで構成されたシンプルなデザインに変更。細い2本のラインと親指の位置を示す「親指ガイド」だけにカラーを入れ、すっきりしたデザインとなりました。また本体のカラーも、機能性や知的な印象を感じさせるペールグレーが選ばれました。

 「キチント トトノウ」という考え方は、インキ色の選定にも反映されています。組み合わせて使用しても調和して見えるように、ベーシックな5色とペールトーン5色に選び抜かれました。「ノートをきちんと整えたい学生」を意識した「キレーナ」は、単に機能を追求しただけでなく、学習時間やノートづくりそのものを心地よく整える体験を目指した蛍光ペンとなったのです。


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発売前から話題化を狙ったプロモーション戦略

 蛍光ペンの不満を解消する画期的な商品が完成に向かう中、プロモーションもこれまでの商品とは異なるアプローチが検討されました。 発売の約1年前から、「キチント トトノウ」というコンセプトのもと、ロゴデザインやパッケージなどの開発を開始、ネーミングについても100を超える候補の中から、商品特長を端的に表現した「キレーナ」が選ばれました。

 また、広告企画も早い段階から手掛けられ、発売に先駆けて発信されたSNS動画では、中高生が感じている蛍光ペンへの不満をテーマとした動画を展開。製品の詳細をあえて明かさず、段階的に情報を発信することで、発売前から期待感を高めました。


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 また、それだけにとどまらず、店頭でも大掛かりなプロジェクトを実施しました。中でも大きな挑戦となったのが、アジア11カ国での同時発売、そして、全国30店舗以上の文具店による一斉デモ販売です。発売日にパイロットの企画担当者や営業スタッフが店頭に立って、店頭で一斉にお披露目。お客様へデモンストレーションしながら実際に試していただくという体感型の販売がスタートしました。

 店頭に立った担当者は、「新しい機能を説明すると、ほぼ確実に購入していただけた」と言います。販売最前線での確かな手応えが、「キレーナ」が十分な魅力を備えた商品であることを物語っていました。形状も機能性もこれまでにない商品だからこそ、「実際に試して、よさを実感してもらうこと」が何よりも大切でした。発売後もSNSや動画を活用したプロモーションを展開し、「キレーナ」の認知度拡大につなげました。


高機能でも、学生が手に取りやすい価格に。
デザイン性だけでなく「悩み」を解決する機能性

 新しいペン先と新しいインキ、多くの新技術が盛り込まれた「キレーナ」。それだけに、「価格も高くなるのでは」と考える人もいるかもしれません。しかし開発チームが最後までこだわったのは、学生でも気軽に購入できる価格でした。発売時の価格は120円(税抜)。毎日使う筆記具だからこそ、手が届きやすい価格であることも重要だと考えました。

 蛍光ペンは、色やデザイン、新色の追加なども楽しみの一つです。しかしキレーナが開発当初から追求したのは、それらに加えて、使う人が「より便利に使える新しい蛍光ペン」、「どんな気持ちで使えるか」という価値でした。

 「キチント トトノウ」。

 「キレーナ」がコンセプトに掲げるこの言葉には、単に「きれいな線が引ける」「ノートや手を汚さない」という機能的な価値だけでなく、「ノートが整う。教科書が見やすくなる。すると、勉強がしやすくなり、使う人の気持ちまで整う」。そんな思いが込められています。

 この考え方は、発売後多くのユーザーの支持を集めました。当初の販売目標を大きく上回るスタートを切り、初年度の累計販売本数は、1000万本を突破、さらに翌年には、「文房具屋さん大賞」も受賞し、その機能性や完成度の高さが評価されたのです。


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「蛍光ペンといえばキレーナ」
と言われる日を目指して

 6年にわたる開発期間の中で、多くのプロジェクトメンバーがバトンをつなぎ、世に送り出された「キレーナ」。学生たちが持つ蛍光ペンへの不満の声に耳を傾け、一つひとつ解決していった挑戦の積み重ねがこの一本に詰まっています。

 企画担当者はこう語りました。

 「『消せるボールペンといえばフリクション』と言われるように、『蛍光ペンといえばキレーナ』と言われる存在になりたいと思っています」

 「蛍光ペンとはこういうもの」と誰もが思っていた常識に疑問を投げかけ、新しい価値を生み出す。その原動力は、ちょっとした使いにくさを解消してより便利な蛍光ペンを目指し、理想を形にするための粘り強いものづくりでした。

 ユーザーの小さな声に真正面から向き合う姿勢から生まれた「キレーナ」。その挑戦は今も続いています。

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